2007年6月29日金曜日

一分の魂

私は「一分の魂」を本気で信じている。
少なくとも爬虫類クラスになれば、感情すら持ってると思っている。

あれは私が学生で、下宿生活をしている頃の出来事だ...

別棟の共同トイレの、壁と天井の隙間にヤモリが住んでいた。
何時も、人の気配を察知して隙間に逃げ込むのか、尻尾だけがスルスルと引っ込むのが見えていた。

ある日のこと、いつもは尻尾しか見せないヤモリが、隙間から顔を出して下を覗き込んでいる。

その視線の先には、逃げ遅れたヤモリが、壁の途中で観念したかの様にへばりついていたのだ!!!

咄嗟に後ずさりした私
すかさず隙間に逃げ込むヤモリ
それを待っていたかのように2匹は消えて行った...

彼らは夫婦なのか、親兄弟なのかは判らない。
しかし、間違いなくそこには、他者を思いやる愛情があったのだ!

血の気が音を立てて引いて行くのが自分でも判った。
筆舌に尽くし難い、「恐怖」に襲われていた。
それは、身に危険を感じる恐怖ではなく、自分がしてきた罪に対する「恐怖」だった。

私は、あろう事か、いつかホウキで叩き潰してやろうと思っていた...愛情という感情を持つ個体をだ。

そのとき以来、私の生き物を見る目が変わった。
流石にハエ、蚊の類いは情け容赦なくやっつけるが、無益な殺生はしなくなった。

一分の魂

私は本気で信じている。